ドクターズブログ

2007年8月アーカイブ

以前入れたプロテーゼが徐々に硬くなり、痛みを伴うようになってきた。最近では鼻先の皮膚が薄くなったような気がする。(45才 女性)

【主訴】
10年ほど前に某有名クリニックで鼻にプロテーゼを入れました。テレビで評判の番組に出演していたお医者さんだったのですが、カウンセリングはとても魅力的な話しかたで、つい乗せられる感じでその日のうちに手術を受けました。鼻巾が広く見えるのは鼻が低い為だから、鼻の根元と鼻先を高くすれば相対的に鼻の巾は狭く見えるはず、というのがその時の説明だったと記憶しています。
手術後、高くなった鼻には満足していますが、ちょっとわざとらしい気もしていました。鼻の頭は最初から硬かったのですが、しだいに皮膚が薄くなっていったような気がします。それが去年くらいから、痛みが出るようになりました。それと寒い時には白く変色していた鼻の頭が最近では赤くなっている感じです。

【回答】
これは鼻のプロテーゼによって内側から鼻の頭の皮膚に慢性的な圧迫が加わり、皮膚が萎縮したものと思われます。このまま放置すると、いずれ皮膚がプロテーゼを支えきれなくなり鼻の頭や鼻孔の中からプロテーゼ飛び出すという現象が起こるかもしれません。また、炎症症状が波及しきわめて重篤な症状を示す事も考えられます。赤くなってきて痛みもでてきたということですからなるべく早めに今のプロテーゼを抜き取ることが大切です。ただし、鼻が急に低くなってしまいます。しばらくその状態でがまんして、鼻の皮膚が改善してから、再度形成手術を考えても良いのですが、耳介軟骨や真皮脂肪または側頭筋膜の移植を行いながら、薄くなった皮膚を補強することも可能です。やや難しい手術になりますので形成外科専門医でも美容外科に慣れた医師に相談しましょう。



豊胸術後乳頭の位置異常がでてしまった。(28才 女性)

【主訴】
6ヶ月前に豊胸では評判の某クリニックで豊胸術をうけました。せっかく大きくするなら巨乳に近いくらい大きくなる事を夢みてしまいました。そこの先生は十分希望に添えるようにということで、大きめのプロテーゼを勧めてくれました。口コミでも大変評判がよかった先生だったので、すぐ手術をお願いしました。
手術は全身麻酔で2日入院しました。出血も多かったようで、一部オッパイの下を切って止血したそうです。しばらくは腫れていたのだと思います。たっぷりとした感じが巨乳系で良かったのですが、3ヶ月くらいするとオッパイ全体がしぼんでくるというより垂れた感じ、乳倫から下の方が長くなってた感じになりました。ふつうのオッパイは真ん中かむしろやや下に乳倫や乳首がついている感じなのですが今の私のものは、丸いオッパイの上の方にちょこんと乳倫が付いている感じなのです。とてもいやなのですがなんとか治せるでしょうか。

【回答】
これは失敗とか被害とかいうものではなさそうです。もともと乳房の大きさは乳倫から乳房下線(乳房と胸の皮膚との境界線)までの距離が基準になります。必要以上に大きなプロテーゼを入れれば、ここが間延びしてしまうわけですね。しかし、乳房が大きくなりたいとすれば、多少間延びしても大きめのプロテーゼをこのようにして入れるしかないでしょう。しかし、この状態がとてもいやになるとすればこれを縮めなくてはなりません。単純に小さなプロテーゼに入れ替えればますます、乳倫や乳頭がオッパイの丸みの中心から上へズレてしまいます。
この場合、乳房下線を上へずらさなくてはなりません。切開は乳房下線に3cmほど入れます。ここからプロテーゼを抜き、下方のカプセルを切除します。小さめの新しいコヒーシブシリコーンプロテーゼを挿入し、カプセル下縁を上方向に移動しながら縫い付けます。プロテーゼのとトップがバストのトップでありそこが乳頭になるように調節するわけです。
乳房下線の傷跡は1年程度でかなり目立たなくなります。この手術は同時にバストアップにもつながります



切開法での手術の傷跡が目立つ(32才 女性)

【主訴】
5年前に切開法でふたえまぶたの手術を受けました。形はまあまあなのですが目をつぶると傷跡が白っぽくしっかり浮いて見えます。お化粧をしている時は目立ちませんが、やはりとても気になります。改善法はありますか?

【回答】
本来美容外科は形成外科の一分野なのです。ですから、美容外科医といえは相場は形成外科専門医と決っているはずなので、その縫合法は芸術的なはずです。肌質に問題がない場合、形成外科専門医がまぶたを縫合すれば傷跡はほとんど分からなくなるのが一般です。しかし、最近では美容外科医といっても、もともと形成外科専門医でない医師も多いのが実情です。
さて、この患者様の場合いわゆる傷跡ですから、最低限度の瘢痕(傷跡)を切除し、丁寧に形成外科的縫合を行えばすむはずです。我々形成外科専門医はときに手術用顕微鏡を使って丁寧に縫合をします。けっして一夕一朝の技ではないのです。



だんご鼻矯正のため、鼻尖軟骨形成寄せという手術をしたところ鼻が上をむいてしまった。しかも、だんご鼻はほとんど変化しなかった。(22才 女性)

【主訴】
だんご鼻がいやで某クリニックにカウンセリングにいきました。そこはあるサイトのランキングの高い所でした。そこで先生にだんご鼻をなおすには、プロテーゼを入れるかまたは鼻尖軟骨を寄せる手術が良いと言われました。プロテーゼを入れるのは気が進まなかったので、鼻尖軟骨寄せをすることにしました。手術は両方の鼻の孔の中を切り軟骨を剥がし左右の鼻翼軟骨を寄せるというものでした。手術は思ったよりすぐ終わりました。しばらくは腫れていたと思いますので様子をみていました。しかし、1ヶ月たってもだんご鼻はもとのままでした。この頃から以前より鼻の穴が目立つように感じてきました。よく観察してみても、やっぱり鼻が上を向いてきたと思います。とても気になってしかたがありません。なんとか修正できるでしょうか?

【回答】
よくものの本に鼻を尖らす手術法として左右の鼻翼軟骨の間の軟部組織を切除し、これを寄せる方法が記載されています。これは海外の白人の鼻の手術書に書かれていることを受け売りにしているものです。白人は鼻翼軟骨が日本人より発達し、むしろ鼻が下を向いています。ですから、鼻翼軟骨をしばり鼻がやや上を向いたほうが美しい鼻のプロファイル得られるのです。しかし、日本人では鼻翼軟骨がほとんど無くまたその形態から鼻翼軟骨を寄せると鼻が上を向いてしまい、いわゆるブタ鼻になってしまいす。
そこで日本人向けのこの手術では、耳介軟骨を採取しこれを鼻尖部に移植します。その際に鼻が尖りながら鼻の頭が若干下を向くように移植するわけです。あなたの場合も寄せた鼻翼軟骨の糸を外し、軟骨移植をすれば比較的簡単に修正ができると考えられます。ただし、安易な手術では変形がおこりうるため、十分知識の有る形成外科専門医に相談しましょう。



目頭切開の後気に入らなかったので修正の手術を受けたが全く効果が無かった。(23才 男性)

【主訴】
平行型の二重にあこがれ、そこの医師に目頭切開を勧められて切開の二重の手術と同時に名頭切開を受けました。
術後、結果がどうしても気にいらなかったので、手術をした医師に元に戻して欲しいと言ったら、「目頭の開いたところをちょっと切って縫い合わせよう、それで簡単に治るよ。」と言ってくれたので再度代金を払い手術を受けました。しかし、2ヶ月もしないうちに完全に元に戻ってしまいました。これは、もう元には戻せないのでしょうか?

【回答】
目頭切開の方法がZ型形成術でしたら最初行った手術の逆を行えば良いのですが、内田法や切除法の場合、確かに元に戻すのはなかなか難しい場合があります。
このような場合、二重の線の目頭側に沿って小さな三角形を仮想し、この三角皮弁を目頭の開いたところに移動する方法があります。単純に開いた目頭を縫合しても開く方向に力が加わるわけですからそれではすぐに戻ってしまうでしょう。そこで目頭の上の皮膚を下に移動して皮膚を余らせるようにする方法があるのです。一度は試してみる価値はありそうですね。



「で、ここで皮下をこのくらいの厚さで剥離する。まあ、こんなもんかな。
ねっ、見える?・・・でだ、ちょっと止血して、・・・おっと、ここも出ているな・・・。じゃあ、針糸!、4--0白でいいかな。」
「先生、なんでこんなに剥離するんですか?」
「だからさあ、テンションを低めるためさあ。ほら、こうすると皮膚はびろーんって伸びるだろ。」
「・・・?」
「まあさ、そのうち分かるって。」
「さて、ここで剥離した皮膚をちょっとフックでめくってと、このあたりかな、こうして針糸を真皮にかけるように通すっと。・・・で、こいつをちょちょいと結ぶんだ。ちょってやってみい、練習してたんだろ?」
「はい!」
「なにやっていんだよ、もっとしっかり結べよ。・・・まあさ、最初はしょうがないけどさ。練習しとけよ。」
「・・・すみません・・・」
入局したてのフレッシュマン医師が先輩医師について手術に入ると、こんな感じである。まるで、手品を観ているようで、さっぱり要領をつかめない。
つい最近まで国家試験の受験勉強しかしてなかったのだから、もちろんあたりまえとは思う。しかし、形成外科職人をめざし形成外科に入局したわけだから、なんかとてもくやしいのである。
「先生、ちょっと縫ってみてもいいすか?」
「だめに決まってんだろ!素人に大事な患者様を任せられかってんだ。アホ!」

ますます、くやしさが込み上げるが、医師の世界では先輩は絶対的存在だ。
「まずさあ、スポンジあたりで練習しろや!。いい口コミを教えてやる。東急ハンズで売っているスポンジはいいって評判だぜ。」

後日、休日の日に評判の東急ハンズに行って、当のスポンジを購入する。以外に値段が高い。たまたま通りがかった、違うフロアーにクッションを作るコーナーがあって、中身のスポンが売られていた。さっきのものに比べるとかなり安い。なんだと思いこれも購入する。
手術見学の際、手術部の看護師にたのんで、使わずに捨ててしまう、余った糸をもらってくる。1回使って捨てる使えそうな針ももらう。外科手術の材料はすべてディスポーザブル(使い捨て)でけっして失敗して捨てたものではないわけだから、けっこう使えるのだ。あとは持針器(外科針を支持し組織に糸を通す、外科ではおなじみの道具)とピンセットを借りる。ハサミはどんなヤツでも良い。
さっそく例のスポンジを切って、1cmくらいの厚さで剥離し、糸をかけてみる。
高いスポンジは、なんかもったいないような気がして、安いやつから使ってみた。ところが安いスポンジはスコスコしてうまく糸がかからない。ちょっと力をいれればすぐちぎれてしまう。なんとか太い糸で大股に糸を掛け結んだ。辺縁はまったく合わさらず。左が右に覆いかぶさってしまう。
「なんだこりゃ!・・・」
がっくりしてしまうが、めげずどんどん練習する。
ちょっと慣れ出したので、さっそく評判のスポンジを使ってみた。
全然感触が違う。ちょっと小さめの針や細目の糸もスムースに掛る。
「なるほどね。やっぱこいつじゃないとだめなのか。」
次の休日に奮発して、この評判スポンジを大量に購入した。
後日、このスポンジによる練習が、形成外科では基本技術である「皮弁(フラップ)」のテクニックの習得と、理論より体が覚える感じを掴むのにおおいに役立った。
その後、鳥の皮つきもも肉を買ってきて、板にくぎで肉と皮膚を貼り付け、これをメスで切って縫ってみる。多少は練習になるが、ぬとぬとして針のすべりが悪すぎる。こいつはあまり役には立たなかった。
次に、革ジャンの裏を切って縫ってみた。今度は硬すぎて針が曲がってしまった。こいつもダメだった。

フレッシュマンの医師は週に2回ほど先輩医師に付いて当直を経験する。当直室は狭く、おそらく監獄の部屋に似ているのだと思う。2段ベットでフレッシュマンは上のベッドで休む。
しかし、当直はチャンスだ。なにしろ昼間の手術では、絶対出番は無い。しかし、急患の場合、先輩が患者の処置をまかせる場合が多いのだ。もちろん手が付けられないほど重症の場合は別だが。
当直の夜はたいてい2〜3人の患者さんが、どこか皮膚を切って来院する。ときには救急車で来院されることもある。
ププッ、ププッ、救急センターからのコールだ。
「・・才男性。前額部を切って来院しています。至急お願いします。」
「ちょうどいいや。おまえやってみい。」
「ありがとうございます!」
ニコニコだ。しかし、先輩の手前自分の評価にもつながるので失敗は許されない。
まず、局所麻酔。
「ここ痛いですか?」
酔っぱらった患者さんが答える。
「ぜーんぜん、いいきもちだよーん。」
まず、デブリドメントだ。印をつけ先輩の顔をうかがう。
(OK!)目で答えてくれた。
デブリドメントとは挫滅した傷の周囲をメスできれいに切り取り術後、傷跡がきれいに仕上がるようにする基本テクニックだ。
印の上をやや内側にメスの刃に角度をつけすーっと刃を滑らしていく。
と、頭では分かっている。しかし、キキッという感じで引っかかってしまうのだ。手が震えてきた。
「おいおい、先生よお、あんた新米だろお。震えてんぜえ。俺は酒の被害者にゃなったけどよ、医療ミスまでされちゃあ、かなわねえよなあ!」
患者さんがおどけたように言う。
額に汗が浮かんでくるのが分かる。

とその時、救急外来の主任看護士の通称「評判のおばちゃん」がちょっと怒ったように患者殿に告げる。
「・・さん、先生はいまね、細かいところを丁寧に縫ってくれてんの。新米先生っていたってねえ、将来の美容外科の大先生になる予定の先生なのよ。少しはだまんなさい。だれでもさ、細かい事しようと思ったら、ちょっとは手が震えるじゃない。わかんでしょ!」
「へえへえ、悪うござんしたね。」
さすが、ベテラン看護師。私は肩の力がすっと抜けるのを感じる。
「すみませんねえ、新米で」
余裕すら出てきた。先輩の方を見ると、目が笑っていた。
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入局し6〜10カ月を大学病院で研修すると、次に待ち受けるのは関連施設の総合病院での麻酔科研修、一般外科研修と整形外科研修である。約2年間形成外科から全く離れて、まず、「医師」になる研鑽を積むのである。
転勤の前日、医局長が言う。
「いいか、明日からは形成外科で習った事は一旦全て忘れろ。君が研修する科の先輩医師から習う事を忠実に守るんだ。」
6カ月の麻酔科、救命科研修を終えると、私は地方の消化器外科へ配属された。
しかし、私は医局長の言いつけを守らなかった。


一般に外科といえば消化器外科をさしているくらい、消化器外科の手術は多い。
特に私が赴任した病院の消化器外科は市内どころかこの地方の評判がすこぶる良い。外来は連日のおおにぎわいだった。
ある患者さんに聞いてみた。
「あなたの住んでいる所からこんなに遠いこの病院までよくいらっしゃいましたねえ」
「口コミですよ。なにしろ、とてもSS先生は評判がいいんですよ。うちの近所の方も命拾いをしたって・・。」
胃、大腸、虫垂、肝臓、胆嚢、すい臓、乳腺、食道、全てが消化器外科の範疇だ。ほとんど毎日、患者さんの腹を裂く。
消化器外科では内臓の手術が終り腹膜を閉じると、もうほとんど手術は終わったも同然な感じになる。最後の皮膚縫合はいたって簡易である。
そこで、私は消化器外科部長のSS先生にお願いをしたのだ。
「先生、皮膚の縫合を自分にやらせて下さい。で、もしできたら、形成外科的縫合を鍛練させていただけませんか?」
「もちろんいいだろう。しかし、練習という言葉は使うな。君ももうほんものの外科医なんだ。単純に手術をさせてくれでいいんだ。ただし、あまり時間をかけるなよ。OP室は忙しいのだから。よし、がんばれ!」
「ありがとうございます!」
毎日一例、大学病院の形成外科で習得した形成外科縫合方を実践してみる。
ほとんどが腹部の縫合である。もちろん内蔵の手術時は雑用に徹する。腹膜を閉じれば、私の出番だ。
「よおし!あとは縫っておいて。」
部長が手を下ろす。第一助手の先生が私に目配せをした。皮下の中縫合が終わると助手の先生も手袋を取りながら言う。
「あとは皮膚だけだからいいよな。じゃあな。」
これから勝負だ。実は中縫合をもっと細かくやるつもりなのだ。
もうだれにも遠慮することは無い。徹底的にきれいに縫うぞ。
これでさらにこの病院の口コミ評判度合がアップするのだ。
きもちだけが先行する。
ふと、首筋に視線を感じた。顔を上げる。
麻酔科の先生がうんざりした顔でこちらを見ている。首をめぐらすと、看護師達も「はよ、せんかい!」みたいな表情だ。
やっぱし、徹底的は無理か。医局長の言葉を思い出した。
しかし、私はこれも「無視」したのだ。
後日少しづつ麻酔科の若手医師や中央手術部の看護師と仲よくなったため、最初の頃の冷たい視線は無くなったが、私も少しは手を休めるようにもなっていた。
この頃産婦人科の若手医師一人が急に大学に帰っていき産婦人科では医師不足になっていた。そこで土曜日の午後と私の研修日さらに日曜の救急帝王切開等産婦人科の手術に参加させてもらうよう産婦人科部長に頼みに行った。もちろん、消化器外科には迷惑がかからない範囲でだ。
産婦人科部長はとても良い人物で快く引き受けてくれた。
「若い医者が僕の前に立っているだけでもいいんだ。」
どう考えてもうざったい私を笑顔で迎えてくれた。そればかりか、子宮の特殊縫合をやらせてくれたたり、3カ月もすると帝王切開そのものをやらせてくれた。おかげで3人の赤ちゃんを私は取り上げる事ができた。優秀な外科医は未熟者の扱いがうまい。すぐどなったり仕事に手を出したがる職人は先輩としてまだ師匠の域に達していないのかも知れない、そんなふうに感じてしまう、産婦人科部長の先生だった。もちろん患者さんからの評判が良いだけでなく病院スタッフからも信頼される先生だった。
私にも気を使ってくれて若い患者さんの腹部を心ゆくまで縫合させてくれた。その頃には麻酔科の先生も中央手術部の看護士達とも打ち解けあっていたから、多少の融通は付けてくれるようになっていたのだ。
この時の経験は私の美容外科職人としての礎を築いてくれたことは言うまでもない。
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こうしてこの2年間に縫合した皮膚の傷の長さは200mに達したはずだ。その後さらに6年にわたり、形成外科専門施設でこんどは形成外科専門医から直接指導をうけながら形成外科職人になっていく。
これが今ではフェイスリフトや二重まぶたの芸術的縫合技術に発展していくのだ。そして行き着くところは「美容外科職人」なのである。



フェイスリフトで評判だったクリニックを選んだのに、手術後傷跡が目立ち、耳たぶが下にひっぱられるような変形を起してしまった。しかもフェイスリフトの効果はほとんど感じられない。(55才 女性)

【主訴】

1年ほど前「口コミサイトの評判ランキング」のサイトを見て評判が よいといわれる某クリニックでフェイスリフトの手術を受けました。手術は2時間程度で終り思ったよりも楽でした。
手術後は包帯も巻く必要が無いと言われ、絆創膏で固定しただけで、3日後にはその絆創膏も取れました。内出血や腫れもほとんど無く、驚くほど簡単に日々が過ぎていきました。
しかし、頭の中や耳の後ろはホッチキスのような針がねで止めてあり、これできれいになるのだろうかと心配になっていました。抜糸後しばらくは傷跡が目立つがいずれ目立たなくなると言われ、がまんしましたが、術後6ヶ月もたっても耳の前の傷跡はしっかり見えますし、なにより耳たぶが下に引っ張られ、丸かった耳たぶはあごに向かって伸び切りとんがった感じに変形してしまいました。しかも法令線やマリオネットライン、さらに頬の垂れ込みは以前のままです。決して安い手術代金ではなかったのに、きれいになるどころか変になってしまいがっかりしています。

【回答】

この症例のような話しは時々耳にします。どんな名医が一生懸命がんばっても時に手術がうまくいかない事もあります。たとえば肌質です。残念ながら傷跡が目立ってしまう肌質の方がいらっしゃします。このような場合はトラニラストの投与行いながら注意して手術を進めます。
しかし、この相談者の場合むしろ主治医の手術手技が手抜きな感じを受けます。フェイスリフト手術では、まず、きちんと法令線までの広範囲の皮膚を剥離して、SMASも奥深くまで剥離しリテイニングリガメントをしっかり切離し処置します。こうしてSMASをしっかり釣り上げ、その上で剥離した皮膚をきれいに若返る方向に引っぱり上げるのです。この際フィブリンのり(生体接着剤)自己多血小板血漿等を注入すると効果が上がるばかりでなく止血作用も上がります。
その後、皮膚は溶解糸でしっかり真皮縫合をおこない、皮膚外部の縫合は髪の毛より細い糸で丁寧に縫合をします。頭皮はクリップでも良いのですが、頭皮以外や一般皮膚ではクリップは使いません。耳たぶは決して引っ張られないように、耳の後ろと頬骨弓の部位で皮膚をしっかり骨膜固定を施すのです。
このようなフェイスリフトの手術を行えば、手の早い美容外科医でも5〜6時間はかかります。私は顕微鏡を使ったりしますので、7〜8時間もかかることがあります。
さらに術後包帯できちんと圧迫をしないと剥離した皮膚の間に血液が溜まることがあります。これは血腫とよばれ術後変形をきたす恐れがあります。もちろん皮膚をしっかり剥離しない場合には効果も無いかわりにこの血腫の危険もないわけです。ですから、このように手抜きをした場合は、包帯もあまりしっかりする必要がないわけですね。
というわけでこの患者様の場合いずれの手続きもされていなかった、とおっしゃていますので、今度はしっかりした形成外科専門医の美容外科でフェイスリフト手術をやりなおせば、きっと良い結果に生まれ変わるでしょう。手抜きをして十分皮膚を取りきらなかった事と、剥離不足から皮膚の後戻り現象で耳たぶがひっぱられたり傷が開いたりしている場合は、比較的簡単に修正ができるのです。簡単といっても5〜8時間はかかるフェイスリフト手術ということは忘れないで下さい。



初めて人の命を救った日

救急車のサイレンが少しずつ近づいて来る。スタッフの顔に緊張が走る。しかし、額にうっすら汗を浮かべ、もっとも緊張しているのは当の私であった。
ここは能登半島の根元、七尾市では最も大きな総合病院の救急救命センターである。時刻は夜の8時を回ったころであった。
昭和60年代初頭といえば二昔も前になるであろう。七尾市は市内と言えども、いたるところに田んぼがあった。夏ともなればウシガエルの鳴き声がうるさいほどに響き、夜は田んぼに蛍の点光が一面に輝くのであった。
ウシガエルの鳴き声が救急車の到着とともにかき消されていく。

「いち、にい、さん、はい!オーケー」
救急隊員の掛け声とともにストレッチャーで患者さんが搬送される。
「バイタル・・・、血圧・・・、呼吸・・・、意識レベル・・・。」
「本日○○時頃△△海岸で・・・、テトラポットに激突・・・、××病院に救急搬送されるも・・・、脳外科専門医がいないため・・・、救急搬送要請があり・・・、脳外科専門医のいる・・・、貴院に転院を・・・。以上です!」
救急隊員の報告が続く。
片方の耳でこれを聞きながら、患者さんの診察を始める。
どうやら、脳挫傷のようだ。すなわち、じわじわと頭蓋内に出血が続いているのだろう。報告によれば搬送先の病院では意識があったという。それが徐々に意識が無くなってきたらしい。
CT検査が必須であるが、その前に気道を確保したほうが良さそうだ。
頭蓋内の出血は徐々に脳を圧迫する。だから、少しづつ意識が落ちてきたに違いない。最後に脳の呼吸中枢を圧迫し始めれば呼吸が停止するだろう。それは即座に「死」を意味する。

そこで、つい6カ月前に麻酔科で研修したとおり気管内挿管を行なう事にする。
ここまでは基本中の基本である。
「喉頭鏡!」
「ちょっと咽の所をおさえて下さい!」
・ ・・
「入った!」
(まず。第一関門クリアだ。ちょっと、ほっとする。)
とりあえず、酸素100%・・・必要に応じアシスト(人工呼吸)の準備。
そして血液検査、同時に CT室へ直行。
私は新米医者であるから、これから先は脳外科専門医にお任せである。
当直事務員に脳外科担当医に連絡を取るようにお願いする。

「どうですか?」
私はレントゲン技師の方に聞いてみた。
「うーん、結構やばいですよ・・。かなり圧迫が進んでいる。」
そこへ事務員からCT室に内線が。
「先生、脳外の■■先生とつながりました。」
「あっ、酒井君。どう?」
一部始終をせき込むようにして報告する。
「そうかあ。分かった。しかし、僕は今学会で**にいるんだよ。明日は午後帰る予定だったけどね。今から車を飛ばしても3時間はかかるよな・・。」
当時は脳外科専門医はとても少なく、特に地方では脳外科医は完全に不足していた時代だった。
「わかりました。先生がいらっしゃるのをお待ちしています。」
「いやいや、その状態では3時間後にはその患者さんはダメだ!」
・ ・・。
「酒井君、君が開頭したまえ!」
「えっ!」
「君は脳外科研修で、何回か僕の助手をしてくれたよね。開頭の仕方くらいはもう分かるだろう。一刻も早く開頭して頭蓋内圧を下げるのだ。出血のコントロールは輸血をしても何とかなるだろう。しかし、頭蓋内圧が亢進し続けたら・・分かるな?」
「しかし・・。」
「しかしもくそもあるか!ほっとけば患者さんはいっちゃうんだぞ。君だってれっきとした外科医だろう。えっ!」
「・・・。」
「大丈夫だ!僕もすぐ向かう。間に合う!」

■ ■先生には随分教わった。新米の私に横から指導をしながら開頭までさせく
れたものだった。大学病院では考えられない事だった。
麻酔科の医師はつい先日まで私に麻酔を教えてくれた指導医だ。
「がんばれよ、バイタル管理はまかせておけ!」
力強い味方である。
剃り上げた頭皮に一気にメスを走らせた。
順調だった。頭蓋骨を外し脳硬膜を開けると、ややどす黒い血液が流れ出てきた。激しい出血がおこっていれば、当然今まで持つはずが無い。基本的には「じわじわ出血」なはずである。
案の定、頭蓋内に溜まった血液を除去すると、新鮮血の出血はさほど多くなかった。
いくぶん患者さんの顔が穏やかになったように見えた。

程なくして脳神経外科部長の■■先生が手術室に入ってくる。
「うまくいっているそうじゃなか!まあ、簡単な手術だけどな・・。後は俺が完璧な腕をみせてやる。」
たちどころに手術室全体が明るくなってきた。
「鉗子!」
「ツッペル!」
「吸引!」
早い!
「よおし。彼は君の患者さんだ。丁寧に縫ってやれ。控室で待ってるぞ。」
患者さんをICUに移し、■■先生を呼ぶ。

「どうだ。君もいっちょまえになったじゃないか。彼は99%助かる。良かっただろう。さて、最後の仕事に行くか。」
「家族へのムンテラ(説明)ですね。」
「うん。」

■ ■先生のちょっと後ろについて説明室に入った。
家族達は不安そうな目を一斉に向ける。
だが、ちょっとおどおどするような感じで、丁寧に頭を下げてくれた。

「・・・というわけでして、とりあえず現在は落ち着いています。しかし、今夜が峠でしょう。・・・。」
廊下に出てから、私は■■先生に食いついたものだ。
「先生!99%助かるんじゃないのですか?」
「人間は難しいものだ。万が一を考え、家族をぬか喜びさせない事も覚えとけ。だが、おそらく明日には君は『命の恩人』って言われるはずさ。」
■■先生が患者から評判がいいだけでなく、大学でも最高の脳外科の教師だったと言われていた事を思い出した。
古き良き時代の外科医修業だったと思う。

こうして、美容外科医は「美容外科医」である前に「形成外科医」であり、形成外科医は「形成外科医」である前に「外科医」である。そして外科医は「外科医」である前に「医師」である。そして医師は「医師」である前に人間である。
こうして私は外科職人を目指していったのであった。



腫れぼったい一重の修正をきれいにしたかったのにひどく大きな眠たそうな二重にされてしまった。(22才 女性)

【主訴】

私はぼったりしたひとえまぶたが暗いイメージでした。人から「にらまれている感じ」とよく言われていたので、浜崎亜由美のようなぱっちりした大きな目にあこがれていました。ネットで口コミで評判というクリニックに相談にいったところ、「あなたのまぶたは脂肪が多いのでそんなふうになるのです。目の裏側をちょっと切って脂肪を抜き、二重まぶた埋没法で少し大きめの二重をつくりましょう。」と言われました。
なるほどと思い、1週間後に手術を受けました。最初はすごく腫れて内出血の青たんができましたが2週間ほどで落ち着きました。しかし2ヶ月たった今もまぶたが半分しか開かない感じで、とても変な大きなふたえになってしまいました。ぽったりした感じはぜんぜん良くならないばかりか眠たそうな目つきになってしまいました。目を開けているものつらい感じです。手術をした医師のところに行っても「腫れているだけだからいずれはよくなりますよ。」とめんどうそうに言われるばかりです。本当に腫れているだけでいずれはぱっちりしたふたえになるのでしょうか?


【回答】

残念ですが、待ってみてもおそらくあまり改善はしないと思います。
手術をする前のあなたのまぶたの状態は典型的な蒙古民族の特徴をとらえていたのでしょう。あなたのまぶたがぽったりして見えたのは眼窩内脂肪ではなく、まぶたの皮下脂肪が多いことが原因だったと思われます。ですから、まぶたの裏側(結膜側)から眼窩内脂肪を切除しても目の上がへこむだけなのです。さらに「ぱっちりした目元」というのを大きなふたえまぶたをつくると勘違いしたのでしょう、ただでも眼瞼下垂ぎみのまぶたに大きな埋没法のふたえをつくれば、目は半分しか開かなくなる場合もあります。
そこでリカバリー法ですが、まず、二重まぶた切開法でちょうど良い程度のふたえ幅のまぶたをデザインします。けっして大きなふたえである必要はありません。眼窩内脂肪が足りないのなら若干脂肪移植を考えます。
次に瞼板前の組織(脂肪はわずかでほとんどが眼輪筋)を適量切除します。これを切除しすぎると癒着から眼瞼下垂様症状がでてしまします。次に必要に応じて挙筋(眼瞼挙筋:まぶたを挙げる主な筋肉)を短縮します。(正確には挙筋腱膜という膜を短縮するのです)もちろん二重まぶた埋没法の時に埋め込んだ糸はすべて抜糸します。切開をする際、必要最低限の皮膚を切除します。もし、目を大きく見せたかったら、内眼角形成(目頭切開)を同時におこなうのも一考かもしれません。目(まぶた)の美容形成はなかなか難しく単純ではありません。手術に際してはそれを引き受ける医師が解剖学や生理学からも十分説明してくれる医師を主治医に選びましょう。



ワキガ手術の傷跡が著しくきたなく残ってしまった(38才 男性)

【主訴】

5年前に意を決し某有名チェーン系クリニックでワキガの手術を受けました。症状は多少改善したと思いますが、満足するにはいたっていません。しかし、今回御相談したいのはこのことより傷跡の事なのです。担当医の話しでは、そこでの手術は超音波メス法で大変評判が良いと豪語していました。価格はちょっと高価だが、一般の方法よりずっと効果が高いといわれ手術をお願いしたのです。
傷跡は両脇に2箇所づつ、1つが2cmほどで巾5〜6mm赤く盛り上がっています。わきの下の毛もそこだけ生えず、とてもみっともない感じです。わき下は全体に薄くなるとは言われていたのですが、傷まわりだけが禿げていて他は普通の密度で毛が生えています。また、傷が時々とてもかゆくなったり、違和感をおぼえたりします。形成外科でなんとか傷の修正治療が可能なものでしょうか。

【回答】

これはケロイド瘢痕でしょう。ケロイドは実は体質(遺伝的なもの)が原因です。ですから、たとえ他の施設で手術を受けたとしても同じようにケロイドが発生したと思います。
治療法ですが、まず、リザベンという内服薬を1〜2年間服用します。月に1回程度、形成外科に通院しトリアムシノロン(ケナコルト)を局所注射します。おおよそ6ヶ月程度でかなり硬くなって盛り上がったケロイド瘢痕はおちついてくるはずです。そのころ瘢痕を切除し縫縮する手術を計画します。手術後h形成外科専門医の指示に従い術後フォローを続けましょう。
蛇足ですが、あなたの受けた手術が超音波メス法としたら、もう少しわき毛が薄くなって良いはずです。おそらく十分に超音波メスの効果が得られていないようですので、これを機会にきちんとした形成外科で超音波メス法ワキガ手術を受け治してみてはいかがでしょうか。ずっと、症状は改善するはずです。



目頭切開を受けたあと、目頭の部分が鼻に向かって引きつれるような異常な感じになってしまった。(25才 女性)

【主訴】

2年前に埋没法のふたえまぶたの手術を受けました。ところが目頭のところのひだ(もうこひだ)に重なって中1/3くらいは一重となるいわゆる典型的な末広型のふたえになってしまったのです。もう少し目をぱっちり大きくみせたかたので某有名クリニックにいきまいした。
そこのホームページには「評判のめがしら修正」と出ていたため、すぐにカウンセリングに行きました。二重も少し大きめにしてZ型切開の手術を勧められました。内田法やW形成より効果があると言われました。1ヶ月後くらいに手術を受けました。抜糸までは目がひきつり痛みがあり、涙がよく出ていました。手術後2ヶ月は傷跡も赤みが強く、盛り上がったような感じでした。徐々に治まってきましたが、落ち着くはずの目の感じがえぐくなってしまったのです。白人のモデルさんの様な目といえばわかりやすいかもしれません。でも私にはとても似合わないのです。もとに戻すのは無理かも知れませんが、多少なりとも修正は可能なのでしょうか?
手術をして2年が経過しています。

【回答】

これもよくある相談です。目頭を切開するとたしかに目は大きく見えるし二重も派手目になります。なかにはとてもお似合いの方もいらっしゃいます。しかし、日本人には目頭が大きく切れ上がった方が少ない為、おしゃるとおり「ちょっとえぐい感じ」は否めない事もあります。
目頭切開(内眼角形成)はおちつくのに6ヶ月程度かかります。すなわち赤みがなくなり傷跡の硬さが弱まるまで思ったより時間がかかるのです。手術後十分傷跡がおちつけば再手術も化のうです。特にあなたの場合Z形成で手術をおこなっていらっしゃいますので、完全に戻すのは無理でもかなり元に戻す事がかのうです。手術用顕微鏡下手術の設備を取り備えた美容外科専門の形成外科や眼科に相談しましょう。



豊胸術後乳房が硬くなってしまった。(30才 女性)

【主訴】

2年前に雑誌等で評判の某大手チェーンクリニックで豊胸手術を受けた。マッサージは必要無しと言われ、また早期にブラジャーの装着が認められていた。
術後2ヶ月目には腫れがひいてきて乳房らしかった形も野球のボールが皮膚の下に入っているような硬い形になってしまった。それにともない乳首は下を向いたままになる。強くさわると痛みを伴う。見た目も格好悪く、さわっても異物感がひどく、このままでは精神的にもまいってしまいそうです。これは手術の失敗だと思います。

【回答】

これは実は、よく耳にする(目にすることも多いのですが)事柄です。もともとプロテーゼを人体内に埋め込むとプロテーゼの周りに被膜(カプセル)が形成されるのです。このカプセルの厚さや硬さは個人差があります。あまりマッサージをしなくても、このカプセルが硬くならないタイプの方もいらっしゃいますが、通常は大抵は硬くぽんぽこりんな感じのおっぱいに仕上がってしまいます。ですからプロテーゼによる豊胸術の場合は1年間は毎日十分にマッサージをすべきでしょう。
さて、あなたの場合、もはやカプセルが縮まり拘縮をおこしていると考えられます。(カプセルコントラクチャー)このような時には、再度カプセルを破るか切除し、新しいコヒーシブシリコーンプロテーゼに入れ替えるべきでしょう。前回のプロテーゼは皮膜とともにまるで野球ボールみたいに変形していますので再利用は避けたほうが良いのです。内視鏡を使い丁寧にカプセル(被膜)を切開または切除します。こんどは剥離範囲もひと周り大きくして十分止血を確認します。
手術は大変気を使いますが、ゆっくり進めていけば基本的には安全です。手術後ドレナージをしっかりおこない、比較的早期からマッサージを開始しましょう。かなりのぽんぽこりんオッパイもこれで改善いたします。



プロテーゼを使い隆鼻を行ったが鼻筋が曲がってみえる、鼻先をさわるとプロテーゼがなかで揺れてしまう。(28才 男性)

【主訴】

鼻根部が低いのと鼻先がまわるくつぶれた感じを治したくて、6ヶ月前、ネットで「評判の美容外科」というサイトから紹介され某クリニックで手術を受けました。I字型プロテーゼを入れるとのことで鼻の先端を十分尖らす事は無理とは聞いていました。手術は麻酔の注射を受けてから15分程度で終わりました。特に固定とかは無く溶ける糸を使って鼻の孔の中の傷を縫ってあるため通院は不要とのことで、手術以来そのクリニックには行っていません。手術後一時的に鼻全体がぶよぶよしていましたが2週間ほどでおちついてきました。その頃鼻の先を指で動かすと鼻根部が揺れることに気付きました。さらによく見ると微妙に鼻筋が斜めに傾いています。これを改善することはできるのでしょうか? それともプロテーゼを抜いてしまうしかないのでしょうか?

【回答】

このような症状はよく相談されます。このような状態はなんで起っているかというと、最初に行った手術の際プロテーゼがきちんと骨膜下に固定されていなかったのが原因です。また、I型プロテーゼを使ったためL型プロテーゼのように鼻中隔で前方の固定ができなかったのも原因の一つです。安定しないプロテーゼを放置しておくと、形態が悪くなるばかりか、鼻の皮下は皮膚に影響を与えますので、修正手術が必要です。
修正は、いま埋入されているプロテーゼを抜き、柔らかく鼻尖部が薄く構成された新しいL型プロテーゼに入れ直します。今度はきちんと骨膜を剥がしこの下にプロテーゼを収めるようにします。骨膜下にしっかり収まったプロテーゼは手術後、皮膚の上からさわっても、まるで自分の骨の様に感じるはずです。



形成外科専門医でもある美容外科医にとって手術用顕微鏡は必需品である。我々が行なうきめ細やかな操作を必要とする手術にはなくてはならない物なのである。
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たとえば{ブレファロプラスティー}と呼ばれる、眼瞼(上まぶたや下まぶた)をはじめとして内眼角形成(目頭切開)や外眼角形成(目尻切開)、眼瞼下垂の 手術はきわめて細かい作業内容が含まれるし、傷跡を極力目立たなくさせるには極細の糸で傷口をピッタリ合わせる必要があるのだ。さらには傷跡修正の手術や 鼻翼形成(小鼻縮小)上口唇短縮術(鼻下を短くする手術)、鼻柱形成(鼻の左右の穴の真ん中を前に出したりひっこめたりする手術等)、また乳頭の形成手術 では顕微鏡を利用して丁寧に縫合したものと肉眼だけで縫合したものではその結果がかなり異なってくる。肉眼では丁寧に縫ったつもりでも、顕微鏡でのぞいて みると微妙に縫い代がでこぼこしているのだ。これを顕微鏡でのぞきながら傷を縫うと辺縁どおしがピッタリ合うのだ。肌質にもよるが、手術用顕微鏡を使って 縫合すると抜糸後半年くらいで傷跡が落ち着き始めると、どこが傷跡なのか分からなくなってしまう事も多い。であるから、こだわりのある美容外科医や形成外 科医は細かな手術では必ず顕微鏡を使用する。
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形成外科専門医ならだれしもが慣れ親しんでいる技術が「マイロクサージェリー」である。
この技術では直径1mmにも満たない毛細血管や神経を繋ぐのである。ただ単に繋げるだけでは意味が無い。血管なら血管空を潰さないように血管の周りに8本 の糸で血管壁を接着する。再接着後一度止めた血液を流すと接着箇所より抹消の血管にすべらかに血液が流れなくてはならない。しかも血液が漏れる事は許され ない。
なにしろ直径が1mmであるから、髪の毛の1/5ほどの太さの糸を使用し0.2mm
間隔で縫い込んでいくのだ。
こうして、切断された指を再接着したり、血行を保ったまま組織を丸ごと移植したりすることができるのである。
もちろん、すぐ、こんな技術を習得できるはずはない。練習、トレーニングが必要になる。
形成外科専門医を目指そうとする医師はまず形成外科専門医養成施設(形成外科研修施設)に入局(医師の世界では就職のことを入局と呼ぶ事がある)しなくて はならない。専門医の卵達は入局試験に合格し入局を果たすと、形成外科専門医試験受験資格を得られる7年間という長い時間に向かって、研修、トレーニン グ、雑用に励むのだ。
この世界では日常的に先輩医師(専門医を取得した医師)が顕微鏡をのぞきこみながら手術をしているのを目にする。おのずと自分たちも練習しなければならないと自覚する。
私がはじめて手術用顕微鏡をのぞいたのは、入局後1年くらいたった頃であろうか。やっとの思いで顕微鏡手術の練習ができるような環境にめぐり会えたのである。私にマイクロサージェリーのテクニックを最初に伝授してくれたのは
当時私が勤務していたある総合病院の整形外科の若手医師の先生であった。彼は整形外科のなかでも「手の外科」を専攻していたため、自分の専門の手術をする 時はいつも顕微鏡を使用していた。手伝いどころか、足手まといになるとは感じていたが見学のつもりで手術に参加させてらう。まず、顕微鏡に目を慣らさなけ ればならない。最初の頃はめまいや吐き気、肩凝りに襲われたものだ。基本を習ったのち、毎日のように1日1時間程度と決め、細いシリコーンチューブを顕微 鏡で見ながら接着する。当初は手が震えほとんど縫う事すらできない。ある程度顕微鏡が扱えるようになると、ねずみ(ラット)の腹部大動脈や足の動脈を切っ ては繋ぐことを繰り返し練習する。つぎに静脈を切断しては再接着する。静脈を繋ぐのははとても難しい。なぜなら壁が薄く、ぺたんとなるとなかなか内空を保 ちながら血管壁を縫い込む事ができないのだ。これに成功するようになれば本物のマイクロサージェリーができるようになる。私の最初のマイクロサージェリー の成功は、人さし指を切断してしまったある患者さんであった。人の血管はねずみのものより太いため、実は本番のほうが簡単である。
こうして形成外科専門医を取得するころにはマイクロサージェリーは当たり前のテクニックになるのである。

私が大学に席をおきながら開業の道を選んだのは今から13年も前になる。開業医ともなり、おもに美容外科を専攻するようになると、マイクロサージェ リーはもはや無用の長物になるかと思いきや、このテクニックは必要不可欠になったのである。手術用顕微鏡は大変高価であるから、なかなか買う事ができな い。そこで最初のころは「額帯型顕微鏡」や「めがねタイプの顕微鏡(ルーペ)」を利用する。一般の美容外科医や形成外科医が良く使うタイプである。とても 使いやすいが視野が狭いのと、もう少し倍率がほしい時にはやや不便を感じる。

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額帯型顕微鏡 めがねタイプの顕微鏡(ルーペ)


p05.jpgな ぜ、こんな面倒なテクニックを使っているのかと言えば、かっこうをつけるわけではないが「向上心」だけである。手術用顕微鏡を使ったからといって手術価格 が上乗せされるわけでもない。例えて言うなら、記録に挑戦するオリンピック選手の心境だろう。形成外科専門医である美容外科医が、「完璧な手術を目指す」 ために超絶テクニックをマスターしたくなるのだ。

評判をあげたいなら、宣伝にいそしんだほうが早い。儲けたいなら、むしろマイクロサージェリーなんてやめたほうがいい。なぜなら、手術時間が倍もか かるからだ。丁寧な手術よりなるべく多くの患者さんを手術して売り上げを伸ばしたほうがいいはずだ。そうではなく、美しい手術、完璧な手術を目指すのが 「美容外科職人」の魂そのものであり、究極の縫合技術が美容外科医の基本でなくてはならないのである。



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