「ハム目」とは、重瞼線の上下で、いわゆる「プックリ」してしまったまぶたの事だろうと思います。食べる直前の生ハムのペラペラ感・・ではないはずですよね。
今回は、他院で行なった切開重瞼の傷跡が目立つ事と、二重が「ハム目」になったのを修正したいという希望の患者様の、カウンセリングから手術までを紹介いたします。(その1)
(Patient): 2年ほど前、他のクリニックで切開法の二重手術を受けました。
もともと、私は完全な一重まぶたで、やや重い感じだったことは確かです。手術後はかなり腫れました。
5日に抜糸をおこないました。その3日後に傷から出血があったので、あわててそのクリニックに行きましたが、大丈夫!ということで、そのまま帰されました。
しばらくは腫れると言われていたので様子を見ていましたが、3ヶ月経っても二重の幅が広く、もったりした感じが治りません。
再度、手術を担当した先生に相談に行きましたが、「まだ、腫れているだけ、もうすぐおちつくよ」と素っ気ない返事です。なんか、あまり来てはいけない感じがして、その後はその先生に診てもらいたくなくなり、そのままほっておくことになりました。
1年が経過し、2年が経ち、まったく幅がせまくならないし、もったりした「ハム目」も気に入りません。
これは修正可能なのでしょうか?
(Doctor): まず、目を拝見してみましょう。
目を閉じてください。 ・・・・。
では、開けてください。 ・・・・。
上の方を見てください。 ・・・・。
(D): 手術後2年経過していますから、傷跡は概ね落ち着いているはずです。あなたの重瞼線の傷跡も落ち着いていますが、やや幅が広く乱れがありますね。担当医の縫合技術は形成外科的に見ると緻密さに欠けるように感じます。
(D): もしかすると、担当医に幅広の平行型の重瞼を希望なさいましたか?
(P): いいえ、日本人ぽいナチュラルなふたえを希望しました。
(D): なるほど、現在の重瞼幅は7mmですので、本来であれば日本人の平均的な重瞼幅にはなっていますね。しかし、あなたの上まぶたの皮膚が厚い事や、ある程度しっかりした蒙古襞がありますので、単に平均的な幅で切開を行えば重瞼線の傷跡の上下で皮膚が弛みを残したり、皮膚そのものの厚さが強調され、もったりした「ハム目」になるのでしょう。
そうなれば、予定より重瞼幅が幅広に見えたり、その結果、目頭側では蒙古襞の上に重瞼線ができたりするのです。
(P): あの、蒙古襞って、これですよね。・・・・。
今は、この襞の上に二重の線ができているのが不自然に見えるのでしょうか?
(D): 蒙古襞は蒙古系民族(モンゴリアン)(東アジアに多い民族だが、現在は世界中に点在する。日本人、韓国人、などに多い。)の特徴でもあり、目頭に襞ができ「涙丘」と言われる目頭の形を隠している形態です。蒙古襞がある方は、この裏側から重瞼線が発生するため、「末広型」の重瞼線が現れます。蒙古襞がない白人系の方(コケジアン)(ヨーロッパ系民族、インド人や中東の民族も含む。)は蒙古襞がないため重瞼線は目頭の涙丘の上から始まり、「平行型」の重瞼線になるのです。どちらかというと、末広型はあっさりした幅が狭い重瞼の形となり、平行型は幅が広くしっかりした重瞼の形となります。
日本人で、蒙古襞がある場合は、末広型がすっきりした感じに見えます。
(P): では、目頭の部分を修正できれば、「ハム目」感はなくなるのでしょうか?
(D):そう簡単ではありません。
例えてみましょう。毛布を畳むのと、布団を畳むのを例に取ります。毛布の畳目はあっさり、薄いのに比べ、布団の畳目はふっくらしているでしょ。
つまり、薄い皮膚のかたに重瞼を作ると、あっさりした重瞼感が出るのに対し、厚い皮膚の方に重瞼を作るとプックリした重瞼感になってしまいます。
上まぶたの皮膚も複雑です。眉毛に近いところは皮膚がかなり厚くなっていますが、睫毛の近くでは、これが極めて薄くなっています。自然な二重まぶたの方では二重の線が、瞼の薄い範囲に形成されることが多いのです。あなたのまぶたは睫毛の近くまで厚さがあったと考えられます。ですから、重瞼幅を5mmくらいに設定し、皮膚の切除は最低としながら、余剰皮膚があるなら、眉下での皮膚切除が望ましかったと診断します。しかし、今更、それを言っても仕方がありません。
(D):そこで、修正案ですが、現在の重瞼幅をなるべく狭くなるように修正します。まず、傷跡はなるべく狭い範囲で切除しなくてはなりません。皮膚は薄くできませんので、睫毛側の皮下組織である眼輪筋を切除しましょう。少しでも皮膚を薄くするためには、もし、余剰皮膚が生じた場合、眉下で皮膚を切除し、皮膚を引き伸ばすと良いと思います。もちろん
皮膚に余裕がなければあえてこの処置はしません。
(P): やはり、傷跡を切り取らなくてはならないのですね?
(D): そのとうりです。あなたの現在の傷跡は凹んでていて目立っていますよね。目を閉じた時、いかにも手術しました感があると感じませんか?
(P): はい、そのことに関しても、気になっていました。もっと、自然な感じを希望しています。だって、天然のふたえの方は、目を閉じた時にしわのように見えますもの・・。
(D): 実は、まぶたの皮膚は人体の中で最も薄い箇所なのです。ですから、丁寧に縫合すると、ほとんど傷跡が目立たなくなるものなのです。また、傷跡が汚く癒着が多いとリンパ流の流れが悪くなり、傷から下、この場合、二重の睫毛側が膨らんでプックリした感じになることもあります。
(P): では、傷跡を切り取り、きれいに縫い直すだけでも、自然な感じに近づけることができるのですか?
(D): そのとうりです。それが、「ハム目」の修正の第一歩なのです。その上で、皮膚のバランスを考え、なるべく蒙古襞の内側に重瞼線が集約するようにデザインをします。まぶたの皮膚が下に移動しやすくなるよう、重瞼線の上側の皮下を剥離(皮膚の下を眼輪筋から剥がす)します。常に、手術は時間をかけ丁寧に進めていくものなのです。
続く・・・