他院でおこなったフェイリフト手術の結果が全く効果がなかった!そればかりか、手術後の傷跡がすごく目立ってしまった!(その2)

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さて、フェイスリフト手術の方法は、どのクリニックでも、また、どの形成外科専門医でも同じ手術をするわけではありません。担当する医師の技術レベルや専門性によって、簡易(インスタント)手術から超本格手術まで段階があるのです。

もちろん、レベルが高いほどフェイスリフト効果も現れやすいといえます。しかし、レベルが高い手術ほど費用も高くなるかといえば、そうでもありません。比較的安価でも高度な手術を心がけている形成外科専門医もいます。

逆に、そこそこの手術費用を取っている割に簡単な手術で終わらせているところも多いようです。

では、良いフェイスリフト手術、あるいは効果的なフェイスリフト手術を丁寧に行っている医療機関をどう見つけるかを探ってみましょう。

まず、担当医との面談です。どのような手術を行うのか、説明を聞いてみましょう。担当医の説明に医学的に根拠があることが大切です。解剖学的な顔の成り立ちから、SMAS(顔の全ての表情筋と棒状筋膜、側頭筋膜、広頸筋で構成される膜状の組織)の吊り上げが大切なことが分かります。

顔の構造を簡単な図で示します。

顔の皮膚の下は脂肪層があり、その下にSMASが広がります。SMASは深部リガメントに支えられています。あたかもSMASがテーブルの台で深部リガメントがテーブルの足のような構造です。
深部リガメントは、その底面を深在の筋肉や骨膜に伸ばしています。深部リガメントの間を縫うように、顔面神経が網目のように這っていると考え理解してください。

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さて、顔の老人顔、つまり顔の弛みは、皮膚ばかりでなくSMASが弛むことが大きな原因です。

すなわち、フェイスリフト手術の最大のポイントはSMASの弛みの改善であることがわかっていただけると思います。

ここで、SMASと深部リガメントの関係を柱と天蓋に例えてみましょう。

雨をしのげる、天蓋のあるオープンエアのカフェを想像しましょう。

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まだ新しい天蓋がピンと張っています。
これは、若い顔におけるSMASの状態と考えます。

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年期がたち、古くなった天蓋は弛んできます。
つまり、老化した顔のSMASの状態を模倣しています。

ここで古くなって弛んだ天蓋をピンと張り直す工事を考えましょう。新材料は使わない条件です。

柱から左側の天蓋を引っ張っても、柱から右側の天蓋は弛んだままですよね。これでは意味がありません。

フェイスリフト手術でいうと、耳の周りの皮膚をちょっと切って引っ張っただけ、または、皮膚だけでなくSMASもちょっと引っ張っただけ、という手術法に例えられます。

そこで、右側の天蓋の一部を切り取り、柱を右側に移動させ固定すれば、全体に天蓋はピンと張り直せるでしょう。

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この理論が、フェイスリフト手術法でいうところの、「ハムラ法」なのです。

SMASの下を大きく剥離し、深部リガメントを切断し、これを新しい所に固定することでSMASを引き延ばすのです。SMASを介し、顔の皮膚の筋(ほうれい線やマリオネットライン(ジョウル)、ゴルゴ線(ミッドチークライン)を目立たなくするのです。

こういうと、簡単に聞こえますが、顔面神経が張り巡らされた、SMASの下を剥がす行為は、なかなか危険な匂いがして緊張の連続になるものです。

この手術では、多数の手順を順番に進め、丁寧な手術を行うと、両側で8時間以上かかってしまいます。しかも、患者さまは首をうんと曲げた状態で片方4時間以上もそのままの姿勢を保たねばなりません。そのため、フェイスリフトを安全に確実に行うためには、全身麻酔が必須な要素になるわけです。全身麻酔で長時間手術となれば、術後は入院が必要です。

では、静脈麻酔でこの手術ができるかといえば、不可能だといえます。なぜかといえば、静脈麻酔では筋弛緩薬を使わないためです。全身麻酔で使用する筋弛緩薬は首の筋肉を柔らかくし、フェイスリフト手術の際起こりやすい頸椎症を防ぐのに必須な条件なのです。

つづいて、もう少し新しい概念を示します。

伸びてしまった天蓋を畳み込み、現在ある柱をそのまま利用してこれに支えさせれば簡単に天蓋を修理できるわけです。

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この理論が、フェイスリフト手術でいう「ベーカー法」です。

ハムラ法に比べるとSMASの下の操作がないため、顔面神経や血管を傷つける心配がありません。また、リガメントを切断しないためSMASの支えが安定的なのです。手術時間もハムラ法と比べるとかなり短い56時間程度で済みます。

だからといって、静脈麻酔で行うのは頚椎症などの合併症はもとより、患者さまの苦痛を招きますので全身麻酔での手術が望ましいといえます。

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フェイスリフト手術は丁寧な手術手技で行えば、ハムラ法でもベーカー法でも良い結果が出せると考えます。

[まとめ]

良いフェイスリフト手術を受けるための主治医選びの条件をまとめました。

  1. 担当医が日本形成外科学会の専門医の資格を有している。
  2. 全身麻酔で手術を行う。麻酔は麻酔科専門医が行う。
  3. 入院設備が整っている病室で手術後入院をさせる。
  4. 手術時間は最低でも4時間程度かけている。通常であれば6時間から8時間くらいはかかると説明される。
  5. 術後吸引ドレーンを必ず使用する。
  6. 術後3日程度は包帯を必ず巻く。