ルフォー1型骨きり術とSSRO(下顎枝矢状分割術)手術の概要
口元が出ていたり引っ込んで見えたりするのは、上顎と上の前歯が出ている(出っ歯)だったり、下の前歯が出ている(受け口)だったりします。見た目のコンプレックスだけでなく、奥歯の噛み合わせがまったく合っていない、咬合不全の場合があり、噛むことがうまくできない方もいらっしゃいます。
ルフォー1型骨きりでは上顎(上の歯並び)を前後ずらすことができます。多少の工夫をおこなうと、前歯の歯茎がヌッとでるガミースマイルの矯正にも一役買います。
また、SSROでは下顎(下の歯並び)を前後にずらすことができます。たとえば受け口の患者様では下の前歯を奥にずらして、一般の人の歯並びにすることができるわけです。
ルフォー1型骨きりでもSSROでも奥歯もずれますから、手術前に咬合を十分検討しなくてはなりません。また、術後に咬合を合わせていく矯正歯科の技術も大切になります。
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)の適応としては以下の症状があげられます。
1)受け口の修正
2)出っ歯の修正
3)魚口変形(口ポコ)の修正
4)上顎骨の湾曲変形
5)ガミースマイル
6)上顎の短縮
ルフォー1型骨きり術とSSRO(下顎枝矢状分割術)の適応と症例
![下の前歯が出ている症例(受け口)](image/p_ukeguchi.png)
![受け口の模式図](image/fig23.png)
![顎と上の前歯が出ている症例(出っ歯)](image/p_deppa.png)
![出っ歯の模式図](image/fig24.png)
![上顎骨の湾曲変形](image/p_ago_wankyoku.png)
![ガミースマイル](image/p_gummy_smile.png)
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)の利点と欠点
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)のメリット
咬合を合わせながら上下顎の形態修正が可能である
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)のデメリット
これは、後日除去することがある。
術後に歯科矯正が必要で、調節には時間がかかることがある。
顎間固定が必要なことがあり、術後1ヶ月程度煩わしさがある。
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)の手術時間と術後の経過
全身麻酔下で2〜5時間程度。
手術後全身麻酔の覚醒後、静脈麻酔と鎮痛剤でフォロー。
術後は1日入院安静。(入院中は静脈麻酔と鎮静剤でフォロー)
手術次の日にドレーン抜去、包帯固定のまま退院。
包帯固定を退院から2〜3日、その後はフェイスバンド固定します。
包帯除去後から洗顔洗髪が可能、手術次の日からシャワー浴が可能。
顔の腫脹は2ヶ月程度で改善する。
口唇の腫れは2週間程度で改善する。
口腔内の違和感、下口唇の感覚鈍麻は6ヶ月程度続く。
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)のアフターフォロー
お食事は2週間程度柔らかいものを選択。
歯磨きは電動あるいは水歯ブラシを利用。
うがいの励行。
退院後はシャワー浴可。
ルフォー1型骨切り術とSSRO(下顎枝矢状分割術)の詳細情報
施術時間 | 2〜5時間 |
手術後の通院 | 術後2〜3日で包帯除去 : 術後2週間で診察後2ヶ月後診察 |
腫れと神経障害 | 顔の腫れ2ヶ月程度、口唇の腫れ2週間程度、口唇周囲の硬化は2ヶ月程度、口唇周囲の感覚鈍麻は6ヶ月程度。 |
カウンセリング当日手術 | 不可 |
入院の必要性 | 必須 |
麻酔 | 全身麻酔 |
リスク(合併症・副作用 等)
- 感染
- 細菌やウイルス等による炎症。
- 血腫
- 術後、皮下や臓器からの出血が起こり、血液が貯留することです。
- 出血
- 術後やや多い量の出血を見ることです。
- 内出血
- 術後概ね起こる皮下の血液の組織への浸透で、自然に吸収されます。
- 瘢痕(創跡)
- 全ての皮膚切開創は、多少の傷跡が残ります。肌質的に目立つ人もいます。
- 肥厚性瘢痕(ケロイド)
- 傷跡の中でも、膨らみや硬さが強いものです。原因は、遺伝性のため術前には防御することができません。ただし、治療法がございます。
- 色素沈着
- 瘢痕の一つですが、色素(メラニン)の沈着が主な原因です。
- アレルギー
- 薬剤が原因のものが多いのですが、金属やテープ等でも発症することがあります。
- 予定形態との差
- なるべく患者さまの意見はとりいれるようにしますが、完全な表現は無理がある場合があります。
- 微妙な左右不対称
- 人間の体は左右不対称であるため、手術後にも左右不対称は起こりえます。
- 内出血
- 口唇周囲下顎部や頸部に紫青色痣がでてくるが3週間程度で吸収される。
- 口唇の傷
- 口腔内の切開を利用するが、振動する器具より口唇に創ができることがある。
- 頤神経麻痺
- 神経は温存させるが、刺激が入った場合、頤神経が一時的に麻痺になる。ごく稀に、神経が切断されることがある、神経再接着を行うが、神経麻痺症状が長引くことがある。
ルフォー1型骨きりの手術の実際
ルフォー1型骨切り術
![ルフォー1型骨切り術 | 上顎と上歯槽骨の間の骨切りを行う1](image/fig05.png)
![ルフォー1型骨切り術 | 上顎と上歯槽骨の間の骨切りを行う2](image/fig27.png)
上顎と上歯槽骨の間の骨切りを行う
切った上歯槽骨を奥に移動して上の歯列を奥に移動する
![ルフォー1型骨切り術 | 切った上歯槽骨を奥に移動して上の歯列を奥に移動する](image/fig07.png)
切った上歯槽骨を手前に移動して上の歯列を前に移動する
![ルフォー1型骨切り術 | 切った上歯槽骨を手前に移動して上の歯列を前に移動する](image/fig06.png)
SSRO(Sagittal Split Ramus Osteotomy)下顎枝矢状分割術
ボーンソウ(電動骨切り機)にて骨をはがし分割するように(スプリット)下顎骨を切り、骨ノミ(コツノミ)で分離させる。
![SSRO(Sagittal Split Ramus Osteotomy)下顎枝矢状分割術 | ボーンソウ(電動骨切り機)にて骨をはがし分割するように(スプリット)下顎骨を切り、コツのみで分離させる。](image/fig08.png)
骨切りのデザイン
分離した歯槽骨を含む下顎骨片を前方に移動し、プレートで固定する
![SSRO | 分離した歯槽骨を含む下顎骨片を前方に移動](image/fig09.png)
![SSRO | プレートで固定する](image/fig13.png)
今度は、分離した歯槽骨を含む下顎骨片を後方に移動し、プレートで更に固定する
![SSRO | 分離した歯槽骨を含む下顎骨片を後方に移動](image/fig10.png)
![SSRO | プレートで固定する](image/fig12.png)
![下顎骨切り術](image/p_shitaago_honekiri.png)
ルフォー1型骨きり術とSSRO(下顎枝矢状分割術)
下顎が前に出ていて、上顎が凹んでいるような変形があり、かつ、奥歯の咬合が揃っていないような場合、奥歯の上下の咬合を合わせるようにしながら、上顎を前方に移動して、下顎を後方に移動する計画を立てます。
![SSRO(Sagittal Split Ramus Osteotomy)下顎枝矢状分割術 | ボーンソウ(電動骨切り機)にて骨をはがし分割するように(スプリット)下顎骨を切り、コツのみで分離させる。](image/fig14.png)
切開予定位置
ルフォー1型骨きり術とSSRO(下顎枝矢状分割術)を行い、上顎は少し前方、下顎は少し後方へ。
![SSRO(Sagittal Split Ramus Osteotomy)下顎枝矢状分割術 | ボーンソウ(電動骨切り機)にて骨をはがし分割するように(スプリット)下顎骨を切り、コツのみで分離させる。](image/fig15.png)
上顎は少し前方、下顎は少し後方へ
症例1 典型的な下顎前突の症例
![典型的な下顎前突の症例 | 術前](image/p_shorei2_jutsuzen1.png)
術前
![典型的な下顎前突の症例 | 術後](image/p_shorei2_jutsugo1.png)
術後
![典型的な下顎前突の症例 | 術前](image/p_shorei2_jutsuzen2.png)
術前
![典型的な下顎前突の症例 | 術後](image/p_shorei2_jutsugo2.png)
術後
![典型的な下顎前突の症例 | 術前](image/p_shorei2_jutsuzen3.png)
術前
![典型的な下顎前突の症例 | 術後](image/p_shorei2_jutsugo3.png)
術後
咬合を合わせながら、ルフォー1型骨きり術とSSRO(下顎枝矢状分割術)を行いました。下顎前突(受け口変形)が綺麗に修正されています。もともと奇形(唇裂口蓋裂)のあった患者さまです。
手術費用
健康保険適応
リスク(合併症・副作用 等)
感染 出血・血腫、神経麻痺、予定形態と実際の形態との差、左右不対称、顎関節症、呼吸不全
ルフォー1型骨きり術とSSRO(下顎枝矢状分割術)の手術費用
項目 | 治療内容 | 金額 (消費税込) |
---|---|---|
ルフォー1型骨切り術 | ルフォー1型上顎骨切り手術 | 1,650,000円 |
SSRO(下顎枝矢状分割術) | 下顎枝矢状分割術 | 1,650,000円 |
ルフォー1 + SSRO | 上顎、下顎、移動手術・咬合適正手術 | 2,970,000円 |
プレート抜去(当院)(2枚ごと) | 220,000円 | |
プレート抜去(他院)(2枚ごと) | 330,000円 |