上顎骨・下顎骨 分節骨切り術(セグメンタールオステオトミー)の概要
奥歯の咬合はぴったり合っているが、前歯が出ている(上顎突出)「出っ前突」状態を矯正したい場合、または、奥歯の咬合は合っているものの、受け口(下顎前突)の状態を矯正したい場合、上顎の分節骨切りあるいは下顎の分節骨切りを別々、または同時に行うことがあります。
奥歯の噛み合わせは良いわけですから、これを修正する必要はないので、前歯(門歯)のみの咬合を修正していきます。ルフォー1型骨切りとSSRO骨切りを行うよりかなり少ない骨切りで目的が達成されます。
上顎と下顎の犬歯を抜歯し、その幅で歯槽骨を切除し、ブロックとなった門歯を後方へずらし固定します。奥歯の咬合が合っている、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)の矯正に適応します。
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の利点、欠点
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術のメリット
奥歯の噛み合わせに変化がないため、咬合が合わせやすい。
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術のデメリット
奥歯の噛み合わせも矯正したい場合には、この手術法では無理がある。前方への移動は困難である。
上顎の骨切りはやや出血が多い。
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の手術時間と術後の経過
全身麻酔下で3時間程度が必要です。
手術後しばらく出血がありますが、徐々に減少していき、ます。口腔内と鼻腔から若干の出血があり、これが自然のドレナージになります。手術後は静脈麻酔と鎮痛剤で痛みのコントロールを行います。
手術次の日の夕刻に退院できます。包帯は2〜3日で除去し、フェイスバンドで軽い圧迫を行う事があります。包帯を除去すると洗髪やシャワー浴が可能になります。口唇がかなり腫れることがありますが、10日ほどで改善してきます。
口腔内の違和感や口唇周囲の感覚鈍麻が現れますが、2〜3ヶ月で徐々に改善します。
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の手術時間と術後のアフターフォロー
お食事はしばらくは柔らかいものを選択します。歯磨きはできたら水歯ブラシを使用しましょう。
口腔内の清潔に留意し、よくうがいをします。退院後はシャワー浴は良いのですが、入浴で体を温め過ぎないようにします。
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の手術時間と術後の詳細情報
施術時間 | 3時間程度 |
施術後の通院 | 2週間目観察、2ヶ月後チェック、咬合チェック:随時 |
腫れについて | 口唇の腫れは10〜14日程度 口唇周囲の硬さの改善は2ヶ月程度 |
カウンセリング当日治療 | 不可 |
入院の必要性 | 必須 |
麻酔 | 全身麻酔 |
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の合併症、副作用
- 感染
- 細菌やウイルス等による炎症。
- 血腫
- 術後、皮下や臓器からの出血が起こり、血液が貯留することです。
- 出血
- 術後やや多い量の出血を見ることです。
- 内出血
- 術後概ね起こる皮下の血液の組織への浸透で、自然に吸収されます。
- 瘢痕(創跡)
- 全ての皮膚切開創は、多少の傷跡が残ります。肌質的に目立つ人もいます。
- 肥厚性瘢痕(ケロイド)
- 傷跡の中でも、膨らみや硬さが強いものです。原因は、遺伝性のため術前には防御することができません。ただし、治療法がございます。
- 色素沈着
- 瘢痕の一つですが、色素(メラニン)の沈着が主な原因です。
- アレルギー
- 薬剤が原因のものが多いのですが、金属やテープ等でも発症することがあります。
- 予定形態との差
- なるべく患者さまの意見はとりいれるようにしますが、完全な表現は無理がある場合があります。
- 微妙な左右不対称
- 人間の体は左右不対称であるため、手術後にも左右不対称は起こりえます。
- 気道閉塞
- 主に血腫が気道周囲にたまり、気道を圧迫することによる。
- 瘢痕
- 口腔内の傷あとも白い瘢痕が目立つことがある。
- 神経麻痺
- 頤神経麻痺や歯茎周囲の感覚鈍麻やしびれ感。
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の手術費用
項目 | 金額 (消費税込) |
---|---|
上歯槽骨分節骨切り術 | 1,210,000円 |
下歯槽骨分節骨切り術 | 990,000円 |
上下顎セットバック術 | 1,870,000円 |
上顎骨・下顎骨 分節骨切り術の実際
先立って、上下左右の犬歯を抜歯しておきます。

切開予定線(上下左右の犬歯は抜歯)