プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の概要
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術では、鼻根部には柔らかいシリコンプロテーゼを使い、鼻尖部や鼻柱部には自己軟骨を使用することで、変形しずらくなります。
昔、硬めのプロテーゼで鼻すじを通し、鼻を高くまた鼻尖部を尖らせる手術が多くのトラブルを招きました。今は亡きマイケルジャクソン氏の鼻が崩れた話は有名ですよね。
そこで、酒井形成外科では、鼻根部はプロテーゼを使用し鼻尖部は自分の軟骨という組み合わせがベストと考えました。
すべてを自己軟骨で形成するには両耳介軟骨をすべて使っても不足することがあります。かといって、肋軟骨(肋骨)まで採取するのはかなり大掛かりです。しかも、肋軟骨はとても硬いため手術後、鼻そのものが硬く、自然な感触が無くなります。その上、肋軟骨は移植後数年で変形しやすいのは問題です。
酒井形成外科のプロテーゼ耳介軟骨による隆鼻手術は、極めて柔らかいプロテーゼを一種のフレームとして考え、ここに耳介軟骨を固定・移植する手術法です。
人類の医学の発展は留まるところを知りません。なかでも組織培養技術や幹細胞を利用した新たな組織の完成も間近なことでしょう。
いずれ隆鼻術にも新しい素材が出てくることは間違いありません。将来、この新素材を利用して,鼻を修正しようとした場合、以前鼻に移植したものは除去しなくてはなりません。その上で、新しい素材に交換する必要が出てくるでしょう。
その際、古い移植材料は簡単に除去できなければなりません。
肋軟骨やゴアテックス素材は癒着が著しく、取り除くことがほぼ不可能です。
その点ではシリコーンプロテーゼは理想的な素材といえるでしょう。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の欠点と利点
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のメリット
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のメリットは、鼻尖部を作るのに自分の軟骨を利用します。
プロテーゼだけで鼻尖を尖らせると、マイケルジャクソン氏のように後年プロテーゼが飛び出す不幸にみまわれる可能性があるのです。
また、傷跡が小さいことです。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のデメリット
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のデメリットは、シリコンプロテーゼは必須材料になりますので、どうしてもプロテーゼが嫌だという人には施術できません。
耳介後部と下腹部に、軟骨と真皮採取のための傷跡が残ることです。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術時間と術後の経過
プロテーゼと耳介軟骨・真皮移植による隆鼻術の麻酔は局所麻酔で入院は必要ありません。静脈麻酔を併用してなるべく意識を落とす事も可能です。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術は、2時間程度です。術後1時間ほどお休みになり帰宅することができます。
隆鼻術の手術後、鼻にはシーネ(ギプス)を施しますが、5日目には外します。
また、軟骨採取部位の耳介には変形を防ぐ、特殊ガーゼ加工をします。特殊ガーゼは、5〜7日で除去します。
鼻孔内の傷の抜糸は、術後10日に行います。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術での腫れは、概ね退くのに1〜2ヶ月を要しますが、術後10日ぐらいには一般的な生活に支障がない程度に落ち着きます。ただし、鼻先の硬さは6ヶ月程度続きます。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のアフターフォロー
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術直後は鼻だけでなく、やや目が腫れることがあります。帰宅時にはマスクが必要と思いますが、酒井形成外科にご用意してあります。
軽い洗顔や洗髪、シャワー浴は、手術の翌日から可能です。もし、鼻を固定しているテープが取れてしまった場合にはご来院下さい。
抜糸までは、ご自分で消毒していただきます。洗顔や洗髪後消毒液と抗生剤ローションで鼻孔と耳の後ろを消毒するだけで大丈夫です。抗生剤ローション等はご用意しています。
テープ固定がはずれたら、お化粧も可能です。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術後の通院は、手術翌日、5日目テープ固定はずし、10日目抜糸、3週間目と2〜3ヶ月後の術後チェックです。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の詳細情報
施術時間 | 1時間程度 |
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施術後の通院 | 翌日傷のチェック。5日目にテープ固定外し。10日目抜糸。3週間目と2〜3ヶ月後にデザインチェック |
腫れについて | 完全に引くには約1ヶ月。ただし、10日程度で日常生活に支障はなし |
カウンセリング当日治療 | 基本的に不可。感染症の血液検査結果があれば可能 |
入院の必要性 | 静脈麻酔使用時に必要の可能性あり |
麻酔 | 神経ブロック、局所麻酔(静脈麻酔も可) |
リスク(合併症・副作用 等)
- 感染
- 細菌やウイルス等による炎症。
- 血腫
- 術後、皮下や臓器からの出血が起こり、血液が貯留することです。
- 出血
- 術後やや多い量の出血を見ることです。
- 内出血
- 術後概ね起こる皮下の血液の組織への浸透で、自然に吸収されます。
- 瘢痕(創跡)
- 全ての皮膚切開創は、多少の傷跡が残ります。肌質的に目立つ人もいます。
- 肥厚性瘢痕(ケロイド)
- 傷跡の中でも、膨らみや硬さが強いものです。原因は、遺伝性のため術前には防御することができません。ただし、治療法がございます。
- 色素沈着
- 瘢痕の一つですが、色素(メラニン)の沈着が主な原因です。
- アレルギー
- 薬剤が原因のものが多いのですが、金属やテープ等でも発症することがあります。
- 予定形態との差
- なるべく患者さまの意見はとりいれるようにしますが、完全な表現は無理がある場合があります。
- 微妙な左右不対称
- 人間の体は左右不対称であるため、手術後にも左右不対称は起こりえます。
鼻尖部皮膚が薄く変化する
プロテーゼの劣化、カルシウム沈着
プロテーゼの露出
耳介変形
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術費用
項目 | 金額 (消費税込) |
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シリコンプロテーゼによる隆鼻(I型) | 275,000円 |
軟骨移植、真皮移植とシリコンプロテーゼ(L型)・(I型) | 770,000円 |
他院プロテーゼ抜去 | 220,000円 |
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の実際
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術のポイント
- プロテーゼに固定する軟骨の位置を十分吟味する。特に鼻柱下点の位置が美しい鼻の決め手になる
- 軟骨採取部位の耳介には変形を防ぐため特殊ガーゼ加工(タイオーバー)を施す
- 軟骨付きプロテーゼは骨膜下と鼻中隔にしっかり固定する
- 特に鼻尖部の軟骨形態を慎重に作成する。意外に下方での高さを作る事がポイント
- 軟骨が大きめの場合や、以前のプロテーゼを除去し安全な隆鼻に切り替える手術では、鼻尖部の皮膚が薄く変形している場合もあり、その時は側頭筋膜や真皮脂肪を変形した皮下に移植する場合がある
鼻尖(鼻先)をプロテーゼだけで尖らせる事はとても怖い!
マイケルジャクソン氏が白人の鼻に憧れ、鼻筋を高く通し、鼻尖部をしっかり尖らせすぎたため後年「鼻がくずれた!」と多くの人々を叫喚させた事は、まだ有名な話です。
これは、鼻尖部を尖らせるのに、プロテーゼの先端のシリコンを硬く厚く尖ったものを使用したためなのです。そのため、鼻先の皮膚の血行が悪くなり内側から皮膚が薄く変形してしまったことが原因です。
そこで、まず、プロテーゼは固形シリコンでもとても柔らかい物を使用します。鼻根部は柔らかいシリコン製プローテーゼが骨膜下にキチンと収まるよう丁寧に入れます。
鼻尖部は徹底的に薄く加工します。そこに後自分の耳の軟骨を採取し、形態を整えて加工したプロテーゼに接着します。時にこの自家軟骨を装着したプロテーゼの鼻尖部に側頭筋膜や真皮脂肪で包みます。
プロテーゼだけの隆鼻では鼻根部を高くすることはできても、鼻尖部を尖らせることは危険です。しかし、この方法ではご自分の身体の組織の一部で鼻尖を形成することができます。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術前
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻の術前の状態です。
紫色の線は、プロテーゼの入る予定位置のデザインです。
術前
耳介軟骨を採取
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術では、まず耳介軟骨を採取します。耳の後ろ側から切開を入れ、耳介軟骨を採取します。
片方から親指の爪ほどの大きさの軟骨が採取できます。
採取された軟骨は、場所により厚みがある所と薄い所がありますので、うまく形を形成します。
耳介は縫合したあと変形を防ぐ為にガーゼを挟み込むように縫い合わせます。
これをタイオーバーといい、術後5〜7日で除去します。
プロテーゼの作製
軟骨つきプロテーゼの移植
鼻翼軟骨と鼻背軟骨の上、鼻骨骨膜下を剥離し、鼻の中に軟骨付きプロテーゼを入れる空間をつくります。 この時、鼻柱の鼻翼軟間の間も十分剥離します。
軟骨付きプロテーゼを挿入する。
鼻骨骨膜下を十分剥離し、同時に鼻柱の左右の鼻翼軟骨の間を剥離します。鼻中隔下制筋は切離します。
ここに軟骨つきプロテーゼを挿入します。
鼻根部では骨膜下、鼻柱基部では左右の鼻翼軟骨の間にプロテーゼを固定するのです。
シーネを添えてプロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術を終了します
最後に鼻へシーネを添えて手術を終了します。シーネは5〜7日間テープで固定しておきます。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術後
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術後10日の状態です。
やや腫れは残っているものの、それほど目立つことはありません。
術後10日
術後1年の状態です
術後1年
柔らかいシリコンプロテーゼは自分の鼻骨に影響を与えない
最近では、CTスキャンから顔面骨の立体画像をパソコンでみれるようになりました。ここ数年、鼻のシリコンプロテーゼが入っている方の3DCT画像を多数見てきました。
その結果、鼻のシリコンプロテーゼが鼻骨に影響を与えていることは、殆ど無いことがわかりました。
硬すぎるシリコンプロテーゼの使用や移植位置を誤った症例で、多くのトラブル例が報告されていました。
しかし、鼻尖部さえ注意すれば、プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術は、概ね問題は少ないと考えられます。