わきが・多汗症とは
わきが・多汗症と皮膚の関係
わきが・多汗症と皮膚の関係をよく知った上で、わきがの治療をしましょう。
ワキガとは
「わきが」とは、脇の下の有毛部に存在するアポクリン汗腺から分泌されるタンパク質が、細菌等によって変性し臭いとなる病態です。
アポクリン汗腺からの分泌には個人差があり、その分泌量や質は遺伝子により決定します。そのため「わきが」は遺伝的な病因を持ち、また個人差も大きいのです。
多汗症とは
「多汗症」とは、脇の下に限らず全ての皮膚に存在するエクリン汗腺の分泌過多によるものです。
体質や肥満が原因とされていますが、特に脇の下では衣類のシミができやすい等コンプレックスを感じる方も多いようです。
日本人は、わきがの遺伝子を持つ人が少ない
また、人体でアポクリン汗腺が開口している毛穴は、以下の所に限られています。
- 脇の下
- 乳輪周り
- 陰毛発生部
- 外耳道
特に脇の下は臭いが出やすいため、古来から「脇が香る」という意味で「わきが」と呼ばれていたのです。この臭いの元となるアポクリン汗腺はすべての人に存在していますが、その分布量は遺伝子に左右されています。
単純なメンデルの遺伝ではなく、関係する遺伝子の数でその臭いの強さが規定されているといわれています。
ただし、どこまでが病的でどこからが正常という区分けは無く、あくまで患者さまご自身の希望で治療を進めるべきだと思います。
汗はエクリン汗腺から、臭いはアポクリン汗腺から
アポクリン汗腺は、皮膚の比較的深いところにあり、その開口部はマンマリーラインに沿った毛穴に存在しています。
それに対しエクリン汗腺は、皮膚の浅い所にあり、しかも全身の皮膚に分布しています。
アポクリン汗腺は自分特有の臭気を発散させる機能を持ち、エクリン汗腺は発汗による体温の低下機能があります。
いわゆる「わきが」はアポクリン汗腺の発達によるもので、多汗症はエクリン汗腺の発達によるものと考えて良いでしょう。
わきがの診断
わきが診断のポイント
- 他人が認める、確かな脇の臭いがある
- 両親のどちらかが「わきが」である
- 耳垢が濡れている(アポクリン汗腺は外耳道にも特異的に存在するため)
ほ乳類の殆どは「臭腺」を持ち固有の臭い情報を発しています。
犬のマーキング(散歩などをすると時々オシッコを塀等にかけるしぐさ)が良い例です。
嗅覚が著しく退化した人間では、この臭いの情報がかなり曖昧になり臭腺も退化していったと考えられています。
人の臭腺の名残りが実はアポクリン汗腺なのです。
わきが・多汗症 マンマリーライン女性は「わきの下」「乳輪まわり」「陰毛の外側」に臭気の出るところがあるですが、男性は発毛が多いため胸毛や腹部の部分からの臭気も考えられます。
このアポクリン汗腺は「マンマリーライン(fig1)」といわれる乳腺の並びに沿って存在します。
しかもそれは毛穴に開口することからアポクリン汗腺が存在する所は以下の部位に言及します。
- わき毛の発生部分
- 乳輪の部分
- 陰毛発生部
個人の体臭は全ての人に存在しますが、個人差が大変大きいものです。
これは人種により特徴づけられものの一つといわれていますが、特に日本人を含む蒙古系民族は体臭(わきが臭)が大変少ないとされています。
ですから、かえって日本人はワキガを気にする傾向にあるのでしょう。
そして、この特異的な臭いは遺伝することが証明されています。この遺伝形態は「常染色体優勢遺伝」ですから、基本的には臭いが出る方へ形質発現するのです。
混血の少なかった日本人では、なかなか強いわきがの人が現れなかったのもこういった理由からなのです。ちなみに他の民族では、日本人とは比べ物にならないほど体臭がきついといわれています。水が少なく入浴の習慣が少ないヨーロッパの人たちの間では、こうして香水文化が発達したともいわれています。
また、わきがの遺伝子は数個存在し、発現数が多い程臭いが強くなるとわれています。
ですから、親の形質が単純に子に伝わるのではなく、父親と母親のそれぞれの遺伝子がいくつずつ伝わったかにより子供のわきがの度合いが決まってくるのです。
時に「ややわきがの父親」と「ややわきがの母親」から「本格派わきがの子供」ができることもあるわけです。
アポクリン汗腺は外耳道にも存在しています。
ですから、わきがの人は大抵耳垢が湿っています。
竹細工の耳垢掃除器で耳あかが取れ、その耳垢を空中に飛ばすことができればその人はわきがでは無いことが多いのです。
それに対し耳綿棒でぬっとりした耳垢が取れる人は、わきがのことが多いといわれています。
多汗症の診断
多汗症診断のポイント
- わきの汗が多く衣類などにシミを作る
- 個人的に汗の量が多く気になる
汗は、エクリン汗腺から分泌されます。
エクリン汗腺は体中の皮膚に存在し、アポクリン汗腺とは異なり直接皮膚に開口しています。エクリン汗腺から分泌される汗の働きは体温の調節にあります。
アポクリン汗腺からの分泌物とは異なり、臭いの成分は殆ど無いため、あまりわきがとは認識されません。
しかし、脇の下は皮膚が密着しやすいため発汗も多く、これがアポクリン汗腺からの分泌物を衣類に浸透させシミを作ったり、より臭いを発散させる原因になります。
ヨーロッパにはない「わきが治療」
『わきが』とは脇が香と書いて脇香から発生しています。
他のほ乳類と同様、人間も個人個人「臭い」があるはずで、その「臭い」の源は脇の下にある臭腺です。
実は殆どの民族がこの臭腺を持ち特有の臭いを放っているといわれていますが、中国大陸の内側に端を発する蒙古系民族は唯一臭腺が発育していません。
私たち日本人は蒙古系民族の血を引いているため、わきが臭う人が少ないのです。
日本から遠いヨーロッパから留学する医師に、日本のわきが手術を見せると、「初めて見た」とか「私の国では考えられない」等という話になります。
実は彼らは「わきが」であることが多く、ワキガが臭わない人が少ないため、『わきが』が普通なのです。
普通なら、治療の必要はないわけですよね。 というわけで、きわめて美しく華やかな文化を持つヨーロッパでは「わきが治療」は殆ど無視されているのではと、私は考えています。
美しい白人のモデル、輝かしいブランドと繊細なファッションに包まれるオートクチュール。そんな会場の中は香水の臭いで満ちています。それは、脇の臭いを隠す下着のようなもの。などと考えると、わきがもおしゃれの発端なのかもしれません。
わきが・多汗症の治療方法
わきが・多汗症の手術の方法は多数あります。
その中でよく施術される方法は、次の3つです。