超音波メスによるわきが・多汗症手術とは
酒井形成外科では、わきが・多汗症手術は健康保険を利用する場合は剪除法(せんじょほう)で行います。
さらに美容面を重視される患者さまや多汗症への効果を期待する患者さまには、超音波メスを利用する手術法をお勧めしています。
わきが手術の超音波メス法は、一種の剪除法(せんじょほう)です。剪除法は、はさみを使用しますがこれを超音波メスで代用すると考えられます。皮弁をひっくり返すことなく、はさみより多くの組織を剪除できます。

超音波メスによるわきが・多汗症手術
超音波メスを使用することで、より深いところまでわきが手術を行います。
わきが・多汗症手術で使用している超音波メスのハンドピースの先端は、1秒間に25,000回程度で0.1〜0.3mm巾で細かく振動します。この激しい振動によって硬い組織は崩れ、柔らかい組織は生存します。
この超音波メスを使用すると、選択的にわきが細胞(アポクリン汗腺組織)を破壊し、血管や神経組織は温存させることができます。
しかし、作用部位には高振動のため摩擦熱が発生します。
そのため、超音波メスでは、この摩擦熱による組織障害(フリクショーンバーン)を防ぐために冷却水を散布吸引する仕組みになっています。
わきが専用ハンドピースは、先端部が工夫され皮下組織の剪除(せんじょ)が効率良く行われるようにデザインされています。
超音波メスによるわきが・多汗症手術の手術時間と術後経過
超音波メスによるわきが・多汗症治療の手術時間は、2時間程度です。
超音波メスによるわきが手術後の2日間は、軽いタイオーバーを施し、4日間は包帯固定が必要です。
抜糸は、術後2週間頃行います。術後2ヶ月程度は、皮膚が硬くつっぱります。
暫くステロイドクリーム等を塗布しながら様子を観察していきます。
もし、傷痕が目立つようなら十分落ち着いてから修正手術を試みます。超音波メス手術後の皮膚の硬さや赤さは、3〜6ヶ月で減少し始め、1〜2年で落ち着いてまいります。
超音波メスによるわきが・多汗症手術のアフターフォロー
超音波メスによるわきが・多汗症手術の最後にタイオーバー処置を施し手術は終了します。包帯を巻き30分ほど休息をして帰宅できます。手を腰に当てるなどして脇の下に空間を作るようにします。
脇の下が圧迫されていますので、腕全体が浮腫むことがあります。
タイオーバーは、術後2〜3日に除去します。
その後軽く包帯を巻きます。この包帯も2日後には外しシャワー浴が可能になります。ここまでくれば、思いっきり腕を振ったり上げたりしなければ特に行動を妨げる必要はありません。
抜糸は、超音波メスによるわきが・多汗症手術の2週間後に行います。傷痕は、1〜2ヶ月間は安定せず、硬さや赤みが強くでることがあります。
また、傷がなかなか塞がらないこともありますが、じっくり様子をみていきます。傷跡は徐々に改善し、1〜2年後には跡として残りにくいことが多いでしょう。
傷痕が完全に落ち着くのには、2年くらいかかります。
脇の下の皮膚は特殊です。この部位では相当に酷い衝撃を受けても傷痕が残りにくい場所なのです。

術後3週間

術後1年
主なリスク 副作用
感染、血腫、瘢痕、瘢痕拘縮、色素沈着、皮膚壊死、皮膚熱傷
この症例の費用 : 40万円
わきがの治療が目的です。超音波メスによるアポクリン破壊と吸引です。なるべく傷跡が残らないことが希望でした。
超音波メスによるわきが・多汗症手術の利点と欠点
超音波メスによるわきが・多汗症治療の利点
超音波メス法によるわきが治療のメリットは、剪除法(せんじょほう)と同程度の効果が期待でき、手術創も小さいことです。
超音波メスによるわきが・多汗症治療の欠点
超音波メスによるわきが・多汗症治療によるわきが治療のデメリットとして、2日間タイオーバーが必要で、暫くは皮膚や傷痕が安定しないことです。
超音波メスによるわきが・多汗症手術の詳細情報
施術時間 | 2時間程度 |
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施術後の通院 | 2日後タイオーバー抜去、4日後包帯抜去、1〜2ヶ月後状態観察 3ヶ月〜6ヶ月傷口経過チェック。 |
腫れについて | 抜糸直後は傷や皮膚が安定しない術後2か月程度は、皮膚が硬くつっぱる。傷跡は3〜6ヶ月でしだいに落ち着く。 |
カウンセリング当日治療 | 基本的に不可。感染症の血液検査結果があれば可能。 |
入院の必要性 | 不要 |
麻酔 | 局所麻酔 |
リスク(合併症・副作用 等)
- 感染
- 細菌やウイルス等による炎症。
- 血腫
- 術後、皮下や臓器からの出血が起こり、血液が貯留することです。
- 出血
- 術後やや多い量の出血を見ることです。
- 内出血
- 術後概ね起こる皮下の血液の組織への浸透で、自然に吸収されます。
- 瘢痕(創跡)
- 全ての皮膚切開創は、多少の傷跡が残ります。肌質的に目立つ人もいます。
- 肥厚性瘢痕(ケロイド)
- 傷跡の中でも、膨らみや硬さが強いものです。原因は、遺伝性のため術前には防御することができません。ただし、治療法がございます。
- 色素沈着
- 瘢痕の一つですが、色素(メラニン)の沈着が主な原因です。
- アレルギー
- 薬剤が原因のものが多いのですが、金属やテープ等でも発症することがあります。
- 予定形態との差
- なるべく患者さまの意見はとりいれるようにしますが、完全な表現は無理がある場合があります。
- 微妙な左右不対称
- 人間の体は左右不対称であるため、手術後にも左右不対称は起こりえます。
皮膚壊死
皮膚熱傷
脇毛の脱落
瘢痕拘縮による肩関節の可動域障害
ボツリヌストキシン製剤によるアレルギー
発汗異常
超音波メスによるわきが・多汗症手術の手術費用
項目 | 金額 (消費税込) |
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超音波メスによるワキガ治療 | 440,000円 |
すそわきが(超音波メスによるワキガ治療) | 400,000円 |
乳輪わきが(超音波メスによるワキガ治療) | 330,000円 |
超音波メスによるワキガ治療の当院再手術 1回 | 165,000円 |
超音波メスによるわきが・多汗症手術の実際
超音波メスによるわきが・多汗症手術のデザイン
アポクリン汗腺の開口部は毛穴であることから、手術効果が「腋臭症」のみの場合は、手術範囲は腋毛の発生部位に留めます。
もし、多汗症も同時に改善したければ、手術範囲は手を下げた状態で、脇の下の皮膚が密着する範囲とします。「腋臭症」の倍以上の範囲になります。
小さな範囲が「腋臭症」のみの範囲。
大きな範囲は「多汗症」も含む範囲。

デザイン
多汗症手術の場合、手を下げた状態で脇の下の皮膚が密着する部位が手術範囲になります。

デザイン
脇の下の皮膚切開
手術範囲に合わせて脇の下のしわ方向に5mmくらいの皮膚切開を2〜3箇所入れます。
超音波メスで汗腺組織を破砕
続いて超音波メスを皮膚の内則から皮下へ向かって作用させます。
超音波メスのハンドピースの先端が振動することで汗腺の除去作用が起こりますが、摩擦熱傷も起りやすいため、1箇所に留まらないように常に留意しながら脇の下の広範囲に超音波メスを作用させます。
超音波メスは、冷却水を散布しながら破砕した組織を水と共に吸引します。

超音波メスでのわきが・多汗症手術の様子
傷の縫合とタイオーバー
超音波メスを作用させた皮膚面に赤みがでてきたら効果が十分と判断します。
細いドレーン(廃液管)を留置し、傷を縫合し、タイオーバーを施し超音波メスによるわきが・多汗症手術は終了します。
タイオーバーとは傷を面で圧迫するため、ガーゼ等を皮膚に縫い込み持続的に圧迫がかかるようにする工夫です。
形成外科では良く使う手法です。

術直後のタイオーパの様子
包帯
最後に包帯を巻きます。脇の下に圧迫がかかっているので、腕をだらんと垂らすと腕の血行が悪くなり、腕が腫れることがあります。手を腰に置くか、寝た状態で両腕を開くような姿勢で安静を保ちましょう。
術後の傷跡の状態
超音波メスによるわきが・多汗症手術での傷痕は、瘢痕が短く線状のため術後1〜2年で十分落ち着きます。

術後1年

術後1年

術後1年

わきがの手術には、さまざまな方法があります。もっとも基本的な手術法は 「剪除法(せんじょほう)」です。
この手術では脇の下にやや大きめの切開を入れそこから皮膚を脂肪層で剥離(はくり)して皮弁を反転します。目で確認しながら脂肪やアポクリン汗腺をはさみ(剪)で切除します。あまり広範囲の手術はできません。
しかし、傷痕や手術の面倒さがあり、もっと簡易にできる手術法はないかと工夫されてきました。
比較的小さな切開から皮膚表面をローラーでしごきながら内容を搾り取るように除去する方法です。
吸引法は、小さな傷から刃のついた吸引管を挿入し皮下を削るようにしながら吸引し脇の下の皮下組織を除去しようというものです。
超音波メスのハンドピースの先端の鋭い振動のため、選択的に脂肪やアポクリン汗腺やエクリン汗腺を破砕吸引でき、かつ血管や神経は温存されます。
わきがの手術法はいろいろと提案されていますが、その殆どが剪除法の形を変えたものだったのです。